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省エネ規格照明

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省エネ規格照明とは?

省エネ規格照明とは、エネルギー消費を抑えるために定められた基準や規格に適合する照明機器およびその設計・運用を指します。単に消費電力が低い機器を意味するだけでなく、照明器具の光効率、制御性、運用方法、寿命、演色性、安全性などを総合的に評価して「省エネ性能」を確保することを目的としています。建築物のエネルギー性能基準や補助金制度、環境目標(ZEBなど)と深く結びつき、設計段階から運用までを見据えた包括的な取組みになります。

定義と目的

省エネ規格照明の主な目的は次のとおりです。

  • • 同等の照明品質を保ちながら消費電力を削減する。
  • • 長寿命・低メンテナンスでライフサイクルコスト(LCC)を低減する。
  • • ビル全体や施設のエネルギー効率向上に寄与し、CO2排出を削減する。
  • • 法規や補助金要件に適合させて導入コストの負担を軽くする。

これらを達成するため、器具選定、配灯設計、制御システム、運用ルールまで含めた総合的な判断が求められます。

省エネ規格の種類と位置付け

省エネに関する規格や制度は国や地域で異なりますが、一般的には以下の要素で構成されています。

  • • 光源・器具の効率基準(lm/Wなど)
  • • 照明設計基準(必要照度、均斉度、UGRなどの視環境指標)
  • • 制御要件(自動調光、デイライト連動、人感センサーなどの導入)
  • • 建築物全体のエネルギー評価指標(BEI、BEMS、ZEBの目標)
  • • 製品適合性評価・ラベリングおよび適合証明手続き

これらは技術進歩や政策目標に応じて段階的に厳格化されるため、設計者や事業者は最新の基準を確認する必要があります。

主要な評価指標と性能要件

省エネ規格照明を評価する際に用いる代表的な指標です。

光効率(lm/W)

投下した電力あたりの光束。高効率の光源を選ぶことで消費電力を直接削減できます。

定格光束と定格消費電力

JISや国際規格に準拠した測定条件での性能値が参照されます。

照度(lx)・均斉度(U0)

必要な作業面照度を満たしつつムラを抑えることで過剰な光出力を避けます。

演色性(CRI / Ra)

高効率化だけでなく色の見え方(商品の見栄えや作業品質)を保つことが重要です。

フリッカー、U0、UGR(眩光指標)

人の快適性や映像撮影を考慮した品質指標。

寿命・保守性(L70寿命など)

ランプ交換や保守作業の頻度を削減し、ライフサイクルでの総合的エネルギー・コストを低減。

制御対応性(DALI、0–10V、PoE、Bluetooth Meshなど)

自動制御で実運用を最適化するための通信・制御機能。

これらをバランスよく満たすことが“省エネ規格照明”の本質です。

技術要素と導入オプション

省エネ規格照明の実現に寄与する主な技術は次の通りです。

LED化(高演色・高効率LED)

同じ光量で消費電力を大きく下げられるため中心的技術。

高効率ドライバーと電源管理

電源効率やPF(力率)、THD(高調波歪み)も評価対象。

光学設計(配光最適化、反射利用、拡散設計)

必要な場所に効率的に光を届けることで余剰な明るさを避ける。

自動制御(照度センサー・人感センサー・タイマー)

昼光連動、在室制御、スケジュール制御で実使用に合わせた出力制御。

ゾーニングやエリア別制御

利用状況に応じてゾーン単位で照度を最小化。

PoE・ネットワーク給電と集中管理

給電と制御の統合で導入・運用コストを低減しやすい。

保守性向上(モジュール交換設計、遠隔診断)

予兆保守でダウンタイムを低減し無駄な代替部品の調達を抑制。

これらを組み合わせて、製品単体だけでなくシステム全体で省エネを実現します。

設計プロセスとベストプラクティス

省エネ規格照明プロジェクトの一般的な進め方です。

要件整理

利用シーン、必要照度、演色性、KPI(消費電力目標、ROI)、法規・補助要件を明確にする。

現地調査とデータ収集

天井高、自然光量、反射率、動線、既設電力インフラを把握する。

配光設計と器具選定

IESデータ等に基づく照度シミュレーションで最適配置を決定。

制御戦略設計

デイライト、在室検知、シーン管理、夜間の節電モードを設計。

PoC(試験導入)

実環境で消費電力・使い勝手・見え方を確認し閾値を調整。

実装・初期設定と運用教育

初期キャリブレーション、ユーザーへの操作教育を実施。

運用・検証・改善

ログを分析して設定を微調整、保守計画と更新時期を管理。

重要なのは「器具だけでなく運用まで含めて」省エネ性能を確保する点です。

法規制・適合手続きと証明

多くの国や地域で省エネ基準や適合証明が導入されています。設計者・施工者が留意すべきポイントは次の通りです。

  • • 適合ラベルや認証(製品の省エネラベル、適合証明書)の確認。
  • • 建築物エネルギー性能評価(BEI、BELS、CASBEEなど)における照明項目の扱い。
  • • 補助金や税制優遇の要件(機器仕様や工事証明、効果報告)。
  • • 段階的な基準強化(技術進化に伴う目標年ごとの引上げ)への対応。

設計段階で法規要件と補助制度を整理すると、後続の申請やメリット確保がスムーズになります。

運用・メンテナンスと生活/業務への影響

省エネ規格照明は導入後の運用が成果を左右します。

定期キャリブレーション

センサーや制御ロジックは時間経過でずれるため定期検査と再調整が必要。

ログ監視と予兆保守

異常や劣化の早期検知で交換を最適化し不要な在庫を減らす。

ユーザー教育

シーン運用や節電モードの理解は実効性に直結するため利用者向けガイドを用意。

段階的アップデート計画

照明以外(空調等)との総合省エネ計画と連携して最適化を進める。

定常運用での改善サイクルを回すことが長期的な省エネ達成のポイントです。

コストとROIの考え方

省エネ規格照明の投資判断では初期費用だけでなくLCC(ライフサイクルコスト)を評価します。

  • • 初期費用:機器、制御、施工、設計・試験コスト。
  • • 運用削減:電力削減額、保守工数削減、ランプ交換費削減。
  • • 非電力効果:快適性向上による生産性や滞在時間の増加、ブランド価値向上。
  • • 補助金・税制:導入支援金や減税効果の計上。
  • • 回収期間:年間削減見込みに基づく投資回収年数の算出。

PoCでの実測値を基にシミュレーションすることでROIの精度が高まります。

リスクと対策

導入にあたっての主なリスクと対応策です。

  • • 見かけの明るさや色再現性が低下するリスク
    → 高演色LEDと現場での色合わせ・PoCで確認。
  • • 制御の誤設定による過度な節電で利用障害が発生
    → フェーズ導入とユーザー確認、フェールセーフ設定。
  • • 規格変更による製品陳腐化リスク
    → 将来の基準強化を見越した機器選定、モジュール交換性の確保。
  • • 初期コストと社内合意形成の遅延
    → 効果試算と補助金適用で経営層にメリットを提示。

設計段階でリスク分析を行い、運用段階まで見据えた対策を組み込みます。

実践事例と期待される成果

典型的な導入効果の例です(事例により差異あり)。

  • • 既存蛍光灯から高効率LED+自動制御へ更新し、照明消費電力を50〜80%削減。
  • • デイライト連動と在室制御を導入したオフィスで年間電力コストを20〜40%低減。
  • • 小売店の配光最適化で商品魅力度を向上させつつ全体消費電力を低減、滞在時間・売上増加を確認。
  • • 倉庫でゾーニング制御を導入し、夜間や無人時間の照明を大幅削減して年間運用コスト低減。

これらは設計品質と運用管理の両方が揃って初めて実現します。

選定チェックリスト(実務向け)

導入時に最低限確認すべき項目を挙げます。

  • • 目的とKPI(kWh削減率、ROI、UGR目標など)を明確にしたか。
  • • 器具のlm/W、CRI、色温度、IESデータを確認したか。
  • • 制御要件(デイライト、人感、グループ化、BMS連携)を定義したか。
  • • PoCで現地の見え方と消費電力を検証したか。
  • • 運用体制・保守計画と予備部品管理を整備したか。
  • • 法規・補助金の適合要件を整理し、申請フローを確保したか。

このチェックリストを基にプロジェクト計画を作成してください。

まとめ

省エネ規格照明は単なる器具の省エネ化を超え、設計・制御・運用・保守を含めたシステムでの省エネ達成を目指す考え方です。光の質を落とさずにエネルギーを最小化するためには、高効率光源、適切な配光、賢い制御、継続的な運用改善が不可欠です。法規や補助制度を活用しつつPoCで実測を行い、LCC視点で投資判断をすることで、環境負荷低減と経済性の両立が可能になります。省エネ規格照明は、持続可能な建築・施設運営の中核を担う重要な要素です。