パワーLED
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OUTLINE
パワーLEDとは?
パワーLED(Power LED)とは、高出力・高輝度を目的に設計されたLED素子およびそのモジュールを指します。一般的なチップLEDやSMDに比べて大きな電流で駆動され、1W、3W、あるいはそれ以上の光出力を持つことが多く、照明器具、スポットライト、街路灯、車両灯、投光器、フラッシュ用途など“光源そのものとして光を供給する”用途で広く使われます。熱設計や駆動回路の要件が厳しく、適切な放熱と定電流駆動が必須となるのが特徴です。
特徴と基本性能
- • 高出力/高光束:同じ面積で従来の小型LEDより大きな光束(ルーメン)を生み出せるため、照明用途での置換が容易です。
- • 駆動電流が大きい:数十mA〜数百mA、製品によっては数Aの駆動が必要。これにより生じる発熱量も大きくなります。
- • 放熱設計が必須:熱抵抗を下げるために基板、ヒートシンク、アルミ基板(MCPCB)や放熱材の採用が一般的。温度管理が性能・寿命に直結します。
- • 色・演色の選択肢:白色だけでなく高演色タイプ、赤外や近赤外、各色LEDとしても供給され、用途に合わせて選べます。
- • 発光面の構造:チップ単体を封止したスター形基板(star PCB)や封止樹脂付きのパッケージ、モジュール化されたものがある。取り扱い性や施工性で選ぶことが多い。
パワーLEDは「光を作る主役」である一方、扱いを誤ると寿命短縮や発熱による故障を招くため、周辺設計が重要です。
駆動方式と電気的注意点
- • 定電流駆動が基本:LEDは電流駆動素子のため、安定した定電流ドライバー(LEDドライバー)で駆動することが重要です。電圧源で直接接続すると温度変化やVFの変動で電流が増減し、発熱や破損に至ります。
- • 立ち上がり・過渡保護:電源投入時の突入電流や過電流を防ぐ保護回路、ソフトスタート機能を持つドライバーが推奨されます。
- • PWM調光との組合せ:調光はPWM(パルス幅変調)や電流制御のいずれでも可能ですが、PWMでは周波数やスイッチングノイズに配慮し、ちらつきや電磁障害を避ける設計が必要です。
- • 配線・コネクタ耐性:高電流駆動では配線抵抗・接触抵抗の低減が重要。適切な太さ、端子、圧着・ハンダ状態の管理が寿命に寄与します。
電源まわりの設計はLED自体の性能以上に動作の安定性を左右します。
熱管理(サーマルマネジメント)
- • 熱の影響:半導体は温度上昇で電気特性や光効率、色温度、寿命が劣化する。ジェネラルに寿命指標はL70(初期光束の70%)で表され、ジャンクション温度が上がるほどL70が短くなります。
- • 放熱経路設計:チップ→基板(MCPCB)→ヒートシンク→空気という熱経路を短くし、熱抵抗を小さくすることが基本。熱伝導率の高い材料やサーマルグリス・銅プレートの利用が有効です。
- • 放熱面積と空冷:高出力では十分な放熱面積と自然対流/強制空冷(ファン)を検討。封入器具や防水ケースを使う際は放熱が阻害されない設計が必要です。
- • 温度監視と保護:サーマルプロテクション(温度センサーでの電流低下やシャットダウン)を組み込み、過熱による破壊を防止します。
熱管理はパワーLED設計で最も重要な要素の一つです。
光学設計と配光制御
- • 配光部材:リフレクタやレンズ、拡散カバーを使い、配光角や均斉度を整える。プロジェクター、スポット、ウォッシュ等の用途に合わせた専用光学が多用されます。
- • 配列設計:複数のパワーLEDをアレイに配置する際は、光の重なりやムラ、陰影を考慮した配置、電気・熱の分散設計が必要です。
- • 演色性と色温度:高演色(CRI)タイプのLEDを選ぶと色再現性が向上。白色は典型的に青チップ+黄色Phosphor(蛍光体)方式で、設計によって色温度や演色を調整します。
- • 光学ゲインと効率:光学要素は出力の一部を損失するため、光学効率を考慮したトータル設計が求められます。
用途(店舗、舞台、産業用)に応じて光学特性を合わせることが重要です。
応用分野と採用メリット
- • 屋内/屋外照明:ダウンライト、スポット、投光器、街路灯、トンネル照明など高輝度が求められる領域。
- • 自動車照明:ヘッドライト、フォグ、デイタイムランニングライト(DRL)での採用。小型高出力であることが利点。
- • 舞台・映像用照明:高演色や高輝度での表現が可能なため、スポットやムービングライトに採用。
- • 産業・植物工場:特定波長の高出力LEDは植物育成やプロセス照明で利用。
- • フラッシュ・検査装置:短時間で強い光を必要とする用途にも向く。
メリットは小型で高効率・高光束を実現し、設計自由度が高い点です。反面、周辺設計の品質が結果に直結します。
設計・施工時の留意点とトラブル対策
- • 定格より高い駆動禁止:仕様の上限を超える電流での運用は寿命短縮や破損を招く。設計余裕を持ったドライバーを選ぶ。
- • 熱経路の確認:筐体素材や取り付け方法で放熱が阻害されないかを現地で確認。封止ケースの蓋や塗装で放熱が阻害される場合がある。
- • EMI/ノイズ対策:高電流やPWMによるスイッチングノイズが周辺機器に影響を与える場合はフィルタやシールドを検討。
- • 防水・防塵設計:屋外機器はIP等級の確保が必要だが、密閉は放熱を悪化させるため、放熱と防水のバランス設計が鍵。
- • 長期保守と部品交換性:モジュール化しておくと現場での交換が容易。ロット差による色味変動を考え、色差管理(binning)を行う。
事前のPoCと熱測定は失敗リスクを大きく下げます。
規格・安全性・品質管理
- • 光・電気安全規格:各国の電気安全規格(PSE、UL、CE等)やEMC規格への適合確認が必要。
- • 光学試験:光束、色温度、平均演色評価、フリッカー評価などを測定し、製品要件を満たすことを確認。
- • 寿命評価:L70/L90などの寿命指標と高温動作での劣化評価を行う。
- • バイニング管理:色温度や色座標のばらつきを管理するため、メーカーはbinグレードで製品を区分する。
品質管理は照明の見え方と信頼性を左右します。
よくある質問(FAQ)
Q. パワーLEDは一般のLED電球と何が違う?
A. 基本は出力レンジと要求される周辺設計。パワーLEDは高電流で駆動し放熱設計や定電流駆動が必須。電球はその周辺回路や拡散光学、ヒートシンク等が既に組込まれて販売されるため扱いやすい。
Q. パワーLEDを直列に繋いで使えますか?
A. 電気的には可能だが、各素子の電流は同一となるため熱やVFの不一致が故障要因となる。定電流ドライバーと適切な熱設計が必要。
Q. 色ムラや色温度ズレが出た場合どうする?
A. 交換時に同一binの素子を使う、現場でのキャリブレーション、フィードバック制御で補正する方法がある。
Q. 放熱が不十分なときの症状は?
A. 光束低下、色温度シフト、寿命短縮、最悪は焼損。温度測定とサーマルインターロックで保護する設計が必要。
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まとめと導入の進め方
パワーLEDは高効率で高輝度を提供する強力な光源であり、照明設計の中核を担える技術です。導入にあたっては次を推奨します。
- 1. 用途と必要光仕様(光束、配光、演色)を明確化する。
- 2. LEDのbin、定格電流、熱抵抗などスペックを照合する。
- 3. 放熱経路と電源回路(定電流ドライバー)を設計・試作する。
- 4. 実機でサーマル試験、光学試験、寿命試験を行う(PoC)。
- 5. 実運用データを取得して閾値や保守計画を整備する。
正しい周辺設計と保守計画を伴えば、パワーLEDは高効率で長寿命な光源として大きな価値を提供します。光の「強さ」と「制御性」を活かして、目的に応じた最適な照明ソリューションを構築してください。