健康志向照明
(株)桜井屋灯具店では、下記事業を展開しています。
・オリジナルプロダクトの企画・設計・製作・販売
・特注照明の設計・製作
・他社既製品照明の卸販売・2次加工
・アンティーク照明の修理・復元
・輸入照明の日本仕様への組み替え及びPSE適合加工
・照明計画設計
・プロダクト一覧
https://sakuraiya-touguten.com/products
・特注照明について
https://sakuraiya-touguten.com/custom-made
・会社概要
https://sakuraiya-touguten.com/about
詳しくはお問い合わせフォームよりお問い合わせください。
健康志向照明とは
健康志向照明とは、単に室内を明るくするだけではなく、人の身体や生活リズム、心理的な快適性などにも配慮して設計された照明環境を指す言葉です。 br>
近年は、住宅やオフィス、ホテル、医療・福祉施設などにおいて、照明を「見るための明かり」だけではなく、「人が快適に過ごすための環境」の一部として考える機会が増えています。 br>
従来の照明では、必要な場所に十分な明るさを確保することが大きな目的でした。 br>
しかし、照明技術や光環境に関する研究が進むにつれて、光は視覚だけに関係するものではなく、人間の生活リズムや覚醒、睡眠などとも関係することが知られるようになっています。 br>
特に、朝から昼にかけて適度な明るさを確保し、夜間には過度に明るい光を避けるといった「時間帯に合わせた光環境」が注目されています。 br>
WELL Building Standardでも、光を人のサーカディアンリズムや睡眠、快適な視環境などと関連する重要な環境要素として扱っています。 br>
光は身体の約24時間周期のリズムを外部環境と同調させる重要な刺激の一つとされ、昼間の光と夜間の暗さの両方を適切に確保することが重視されています。 br>
そのため「健康志向照明」という言葉を理解するには、明るさだけではなく、色温度、照度、光の方向、まぶしさ、調光、時間帯、自然光との組み合わせなど、複数の要素を総合的に考えることが重要です。
健康志向照明と一般的な照明の違い
一般的な照明では、「部屋を明るくする」「作業がしやすい明るさを確保する」「インテリアを美しく見せる」といった視覚的な目的が中心になります。 br>
一方、健康志向照明では、そこに「人が一日の中でどのような時間を過ごすのか」という視点を加えます。 br>
例えば、朝のリビングでは自然光に近い明るい環境をつくり、日中は十分な光を確保し、夕方から夜にかけては徐々に落ち着いた光へ切り替えるという考え方があります。 br>
夜遅くまで昼間と同じような強い光を浴び続けるのではなく、時間帯によって光の量や質を変化させることで、昼と夜の違いを感じやすい環境をつくります。 br>
つまり健康志向照明では、「一年中、同じ明るさの照明をつける」という考え方から、「時間や用途に合わせて光を変える」という考え方へ移行することが重要です。
健康志向照明で重要なサーカディアンリズム
健康志向照明を語るうえで重要な用語が「サーカディアンリズム」です。 br>
サーカディアンリズムとは、約24時間周期で変化する生体リズムのことを指します。 br>
睡眠と覚醒、体温、ホルモン分泌など、さまざまな生理機能がこのリズムと関係しています。 br>
光は、この体内時計を外部環境の昼夜周期に合わせるための重要な刺激の一つです。 br>
WELLの照明基準でも、光によって生体のサーカディアンリズムが調整される「サーカディアン・フォトエントレインメント」という考え方が紹介されています。 br>
特に重要なのが、朝や昼の光と夜の光を同じように扱わないことです。 br>
昼間には適度な明るさを確保する一方、夜には必要以上に明るい環境を避けるというメリハリが、健康志向の照明設計では重要になります。 br>
この考え方から派生して、「サーカディアン照明」「サーカディアンライティング」「生体リズム照明」といった言葉も使われています。
健康照明とヒューマンセントリック照明
「健康志向照明」と非常に近い概念として「ヒューマンセントリック照明」があります。 br>
ヒューマンセントリック照明は、人間を中心に考えた照明という意味で、視覚的な明るさだけではなく、人の生活や心理、生理的な側面にも配慮して照明環境を設計する考え方です。 br>
一般的な照明設計では、照度や配光、演色性、グレアなど、視覚環境に関する性能が重要になります。ヒューマンセントリック照明では、それらに加えて、時間帯による光の変化や自然光との関係なども検討します。 br>
健康志向照明という言葉が「健康的な暮らしを意識した照明」という生活者側の視点を持つのに対し、ヒューマンセントリック照明は、照明設計・建築・環境デザインなどの分野で使われる専門的な表現として理解すると分かりやすいでしょう。
色温度と健康志向照明
健康志向照明を考える際には「色温度」も重要な用語です。 br>
色温度は、光の色味を表す指標で、単位にはK(ケルビン)が使われます。 br>
一般的に、色温度が低い光は暖かみのある赤みを帯びた光、高い光は白色から青白い印象の光になります。 br>
例えば、夕暮れや電球色のような暖かい光は落ち着いた空間づくりに向いており、昼白色や昼光色に近い光は、作業空間などで明るくすっきりした印象をつくるために利用されます。 br>
ただし、「高色温度だから健康に良い」「低色温度だから必ず睡眠に良い」と単純に考えることは適切ではありません。 br>
光の身体への作用は色温度だけで決まるものではなく、光の強さ、光源のスペクトル、浴びる時間、光を見る方向、環境全体など複数の条件によって変わります。
そのため健康志向照明では、色温度だけを基準にするのではなく、時間帯や用途と合わせて考えることが大切です。
調光機能と健康志向照明
健康志向照明との相性が良い機能の一つが「調光」です。 br>
調光とは、照明器具の明るさを連続的または段階的に変える機能を指します。 br>
一日の中で必要な光量は常に同じではありません。 br>
朝や日中には比較的明るい環境が必要でも、夜のリラックスタイムにはそれほど強い光が必要ない場合があります。 br>
調光機能があれば、食事、読書、仕事、休息、就寝前など、用途に合わせて明るさを調整できます。 br>
また、調光は健康志向という観点だけでなく、空間演出にも有効です。 br>
例えばリビングでは、昼間は明るく、夕方は少し照度を落とし、夜には低い位置の間接照明を中心にすることで、時間の経過を感じられる照明環境をつくることができます。
メラノピック照明とメラノピックルクス
近年の健康志向照明で注目される専門用語に「メラノピック」があります。 br>
人間の網膜には、視覚形成に関係する桿体細胞や錐体細胞だけでなく、光を受けて生体リズムに関係する情報を脳へ伝える「内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)」があります。 br>
WELLでは、従来の照度とは異なる考え方として、こうした細胞への光刺激を考慮した「Equivalent Melanopic Lux(EML)」という指標を紹介しています。 br>
EMLは、通常のルクスとは異なり、ipRGCへの作用を考慮して光の生物学的影響を評価するための指標です。 br>
このため、健康志向照明について専門的に調べる場合には、「メラノピック」「メラノピック照度」「メラノピックルクス」「EML」といったキーワードも関連語として重要になります。
夜間照明と健康志向照明
健康志向照明では「夜にどのような光を使うか」が特に重要なテーマになります。 br>
夜間は、昼間と同じような強い光で空間を照らすのではなく、必要な場所だけを穏やかに照らす方法が考えられます。 br>
例えば、リビング全体を高照度で照らすのではなく、フロアライトやテーブルライト、間接照明などを利用して低い位置に光を配置する方法です。 br>
WELLでも「Light at night」という考え方があり、夜間の光がサーカディアンリズムに影響する可能性を踏まえ、睡眠空間への光の侵入を抑えたり、夜間の移動には低い光量の照明を用いたりする考え方が示されています。 br>
ただし、夜間照明については「暖色ならどれだけ明るくても問題ない」という意味ではありません。 br>
光の色だけでなく、明るさ、光源の位置、点灯時間などを含めて考える必要があります。
寝室における健康志向照明
寝室は、健康志向照明を考えるうえで特に重要な空間です。 br>
寝室では、就寝前に強い光を浴び続けないようにしながら、ベッド周辺やクローゼット、通路など必要な場所には安全な視認性を確保する必要があります。 br>
例えば、天井照明だけに頼るのではなく、ベッドサイドランプや足元灯などを組み合わせることで、必要な場所だけを照らせます。 br>
また、夜中に起きた際には、部屋全体を非常に明るくするよりも、足元などを低い位置から照らすほうが、夜間の環境としては使いやすい場合があります。 br>
このように健康志向照明では、「明るい照明を設置する」という発想から、「必要な場所に必要な量の光を配置する」という発想へ変えることが重要です。
リビングにおける健康志向照明
リビングは、一日の中で使用時間が長く、食事、会話、読書、テレビ、休息などさまざまな行動が行われる場所です。 br>
そのため、一種類の照明だけですべての用途に対応するより、複数の照明を組み合わせるほうが適しています。 br>
天井照明による全般照明に加えて、フロアライト、テーブルライト、ペンダントライト、間接照明などを組み合わせることで、用途や時間帯に応じた光環境をつくることができます。 br>
特に夜は、部屋全体を均一に明るくするのではなく、視線の先や手元など必要な部分に光を配置すると、落ち着いた雰囲気をつくりやすくなります。
まとめ
健康志向照明とは、明るさだけを基準に照明を選ぶのではなく、人の生活リズムや快適性、視環境などを考慮して光環境を整える考え方です。 br>
その背景には、サーカディアンリズム、自然光、ヒューマンセントリック照明、ウェルビーイング、メラノピック光、調光、調色、色温度、照度、演色性、グレアなど、さまざまな照明関連の考え方があります。 br>
特に重要なのは、昼と夜で光の環境を変えることです。 br>
昼間は適切な明るさを確保し、夜間は必要以上に強い光を避けることで、一日の時間帯に応じたメリハリのある照明環境をつくることができます。 br>
WELLの照明基準でも、昼間のサーカディアン照明と夜間の光環境をそれぞれ重要なテーマとして扱っています。 br>
また、健康志向照明では、照明器具そのものの性能だけでなく、器具の配置、光の向き、照明の高さ、自然光との組み合わせ、使用時間まで含めて考えることが大切です。 br>
「明るければ良い」「暖色なら健康的」「LEDなら健康に良い」という単純な考え方ではなく、生活の時間帯や用途に応じて光を使い分けること。 br>
それこそが、健康志向照明を理解するうえで最も重要なポイントです。 br>
今後の照明は、単に空間を明るくするための設備から、人が一日の時間を快適に過ごすための環境要素へと、さらに役割を広げていくことが考えられます。 br>
健康志向照明は、その変化を象徴する照明分野のキーワードの一つです。